2015年 08月 14日
沢登りをする者にとってここは憧れの場所ではなかろうか そして僕らにとっては3年越しの夢の場所… 完全遡行を目指し上ノ廊下から薬師沢小屋への沢旅を 2015 8/11から開始した 今回のパートナーのヒラノさんとは何度も綿密に打ち合わせをしこの日を迎えたのは言うまでもない お互いガイドビデオを繰り返し見てルートの注意点、攻略方、エスケープルートを 頭に叩き込んだ。 広河原手前までは2人で過去に遡行したことがあるんだ あの時はタル沢のゴルジュも容易に突破出来る水量だった 今回の為に装備類も必要な物を揃えた また、岩井谷等の簡単な沢で練習したり、昨年の秋頃からクライミングの講習会に何度も参加しロープワーク、マルチピッチのシステム、支点の構築方、懸垂下降の特訓に明け暮れ自信をつけていった ここまで万全な準備をしても、我々サラリーマンは限られた休みの中でプランを組み立てなければいけない 天気次第で全ての計画が白紙になる 容易く有給を取れる優良企業に勤めていれば話は別だが、生憎スーパーが付く名古屋のブラック商社マンのため簡単ではない… だが幸い予定していた日程の前半2日は晴天予報のようだ 2日あれば最悪でも登山道にエスケープ出来るエリアまで遡行出来る 日頃の行いがよいのだろう 条件は完璧に整った 僕らは別々に2台の車でまず立山アルペン村に集合する その後、1台の車を亀谷のゲートにデポし残りの1台で意気揚々と扇沢へと向かった まさかあんなことが起こるとは思いもせず… 朝の扇沢 さすがお盆だけあって始発のトロリーバスは40分前でもこの行列だ 珍しく殆ど観光客のようだ ツアーか何かの人達だと思う ダムへ到着 装備が重く堰堤歩きが結構キツイ しかしこれからもっと大変な遡行が待っている 皆はこれを見に来る為にここへ来るので一応写真を撮った 正直僕らはあまりにもこのエリアに訪れすぎていて全くと言っていいほど 興味のない光景になりつつある エッチラホッチラ 軽快軽快 しばらくして平の小屋へ到着 船長の佐伯さんは不意の転落で大怪我をされて療養中との事かなり痛々しい感じだったが元気にされておられ安心した でも持っていたあのコップの中身はおそらく酒であったと思う ピンチバッターの小型船での渡しはスピーディでありがたい。 佐伯船長の船だとトローリング釣りしながらなのでノロノロだが今回はあっという間に対岸に到着した ヒーコラヒーコラ…ハシゴがキツイ 奥黒部ヒュッテまでの時間短縮の為、途中でBWに降りて川沿いに遡行する 毎度このパターンで時間短縮していたが… 今回はとても遡行出来る流れではなくいきなりザイル渡渉を強いられ大幅に時間を食うことに(涙) 急がば回れとはこの事か… それでもあっけなく奥黒部ヒュッテに到着し早々に沢装備を準備する。 登山計画書を提出し大好きな小屋番のジイちゃんに今から上ノ廊下に 行くことを告げ出発 ジイちゃん「無理そうならすぐ引き返されよ」 このジイちゃんは本当に雰囲気があって大好きだ さあ行くぞー! まず東谷から本流へ降りる すぐに東沢出合いに降り立つ 今日はどこまで行けるかな、出来れば口元のゴルジュを突破したいと 思っていたのだが… 単独で渡渉出来る所はあまりないな、水量はそう多くはないと思っていたが… 多くの渡渉をスクラムで突破した 安全第一 スクラムでも渡渉出来ない流れはザイルを出し泳ぎやザックピストンなどで突破した。 しかし以前口元のゴルジュを越え廊下沢出合いあたりまで行った時とはまるで水量が違うんだよなー どうなる今回の上ノ廊下 結局ザイルを出したりしまったりで予想以上に時間を食ってしまった、トホホ… そしてしばらくして下ノ黒ビンガが現れた ビンガとは切り立った岩壁の意味で昔の富山の人が使っていた言葉らしい しかし僕が一番見たいのは上ノ黒ビンガなんだよな あの凄まく切り立った幾何学模様の岩壁を撮影する為に今回防水のコンデジを購入した 明日になればその夢が叶う 楽しみでしょうがないよ、あーホント この日は天候も安定してるので下ノ黒ビンガの少し上あたりでビバークする事に 今回は酒類には妥協無し! 飲みたい物、食べたい物を持ってきて黒部の清流の横で2人で小宴会 至福のとき キャンドル制作が趣味な友人の嫁さんから頂いたキャンドルを今回持ってきた 中々雰囲気があって良いじゃない しかしヒゲヅラで坊主頭の我々に花柄のキャンドルというのは面白い絵だ(笑) 4時に起床し6時頃出発 この日は最初から難関が待ちわびている そう口元ノタル沢出合い上のゴルジュだ 少し顔が緊張している このカーブを曲がればタル沢出合い、緊張 空気が冷たい、と思ったら左岸に大きな雪渓が残っていた 上ノ廊下は時折厳しい表情を僕らに見せる タル沢出合いに着いた そしてこの上に核心のゴルジュがある ここは泳ぎで突破する 核心部は緊張するなー まず右岸の岸に取り付き荷物をいったん置く その後ザイルとライフジャケットをセットし左岸に向かって泳ぎヘツリながら このゴルジュを突破する作戦だ まず僕が右岸の岸に取り付こうとした時だった 事件が起きたのは… あれ なんで? ハーネス カラビナ 渓流シューズ? なんでここに装備が落ちてるんだろう? あっザックもある えっ人がいるの? 渡船で渡ったパーティは僕らよりも後ろにいるはずだが あれ… あっ… おかしな角度で曲がった足だなんだ…コレ… クッソなんでだ!! なんでなんだよぉ!畜生! うしろを振り向きヒラノさんを見る まだこの取り付きで何が起きているか気づいていなくキョトンと僕を見つめる この横たわった人はどう考えても見たところ絶命されている 僕はこれ以上顔を見れない ヒラノさんに状況を説明し確認してもらうことに ヒラノさんは声をかけるがなんの応答もない これはお互いもう正気の沙汰じゃないよな さあどうしよう ヒラノさんは僕達はまた来れるよ、残念だけどヒュッテに戻り連絡しようと言う 僕はダダをこねる子供のようにこのまま進むという 残念だけどここまで進んできた以上引き返すことは考えたくない 明後日に上ノ廊下を突破し薬師沢小屋で赤塚さんに報告すればいいと説得する ヒラノさんは増水して流されたら遺体の回収が困難になる、それじゃ家族が悲しむ! ヒュッテに戻って報告すべきだと言う 僕は話を聞かずザイルを出し8の字を組んでビレイループのカラビナにセットする ザイルをヒラノさんに渡す 行くよ…しょうがないじゃん そして冷たいゴルジュを左岸に向かって泳ぎ出した 左岸のヘツリを終え右岸に向かってジャンプするボジションに着く なんとかなる水量だ ここを突破すれば夢が叶う 憧れの上ノ黒ビンガや立石奇岩を見ることができるんだ 恐くて見ないようにしていた右岸下流が少し気になった この人にとっての上ノ廊下もそうだったんだろ なんだか急に自分のやってる事が怖くなってきた なんかさっきから身体の震えが止まらないんだ 歯もカチカチ音をたててるし あーあ 冷たい沢水のせいなんかじゃないよな、これ 一気に下流に泳いでヒラノさんの元へ戻った AHOAHO「ヒュッテに戻って報告しに行く、今日なら回収出来るから急ぐよ!」 それから3時間くらいかかったのかな 苦労して遡行してきた流れをザイルを出して泳ぎ、ザックピストンをしながらヘロヘロになって奥黒部ヒュッテに到着した ヒュッテのジイちゃんに状況を説明し急いで室堂の山岳警備隊へ電話してもらう 僕が電話を変わり場所や遭難者の方の状態を説明した 天気の様子やヘリが近づける場所なのかと色々と質問に応えた そしてしばらくしてヒュッテの窓からヘリが現場に向かって飛んでいくのを確認した 小屋のジイちゃんは僕達にこう言ってくれた 「あんた達がいなかったら本当に大変な事になってたよよく戻って来てくれた本当に」 ジイちゃんは差入れでビールを何本もくれた これは僕が1番大好きなビール スーパードライ 本当はこのキレのある炭酸でグビグビと喉越しを楽しみたいところ でも 赤くなっちゃった目を誰にも見られたく無いから、少しづつ飲むことにした…
by AHOAHOFLYMAN
| 2015-08-14 07:33
| 登山
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